こんにちは、早起きラガードです。
今回は、こんな疑問についてお答えします。
なお、結論を先に言ってしまうと
- サッカーのターンオーバーとは「先発メンバーの大幅な入れ替え」
- ターンオーバーの採用にはメリットもデメリットもある
- ターンオーバーの見極めは直近5試合の先発出場試合数
となっています。
詳しく、見ていきます。
サッカーにおけるターンオーバーとは
ラグビーやアメリカンフットボール、バスケットボールでは、「ボール奪取による攻守の入れ替え」を意味するターンオーバー。
しかしサッカーでのターンオーバーは、ちょっと違います。
サッカーにおけるターンオーバーとは、試合の重要度に応じて、先発メンバーを大幅に入れ替えること。
強豪チームがリーグ戦やカップ戦で格下のチームと対戦する場合、主力選手を温存し控え選手中心のメンバーで戦うというケースなどを、ターンオーバーと呼んでいます。
ターンオーバーはなぜ必要?
これはもうシンプルに、選手を休ませるためです。
サッカーは、1試合ごとの選手の消耗が大きいスポーツです。
野球のように、毎日試合をする、なんていうことはとてもできません。そのため国内のリーグ戦は基本的に週1回の開催となっています。
開催日は週末となることが多いです。
実際には、週に2試合以上戦うこともある
ただ、Jリーグも含めて各国のクラブは、実際には国内リーグだけを戦っているわけではありません。
リーグ戦と並行して、カップ戦や、強豪クラブになるとチャンピオンズリーグなども戦っています。
週末は国内リーグ戦で埋まっているため、そうした試合は、火曜日とか水曜日とかの平日に実施されます。
そのため、各クラブは毎週ではないにせよ、時期によって週に2試合(場合によってはそれ以上)の試合を戦う必要が出てくるのです。
同じメンバーで戦うと、疲労回復が間に合わない
週1試合のリーグ戦だけであれば、ターンオーバーは必要ないかもしれません。
しかし実際には、日程は過密です。そしてこの過密日程を、ずっと同じメンバーで戦い続けた場合、主力選手たちは疲弊しきってしまいます。
そうした事態を避けるためにも、適度に選手を休ませることができるターンオーバーが必要となるのです。
ターンオーバーのメリットは3つ
ターンオーバーを採用するメリットには、次の3つがあります。
- 主力選手を休息させることができる
- 疲労によるチームパフォーマンス低下の回避
- 若手の強化と控え選手のモチベーション維持
一部、必要性と重なるところもありますが…… 詳しく紹介していきます。
メリット1:主力選手を休息させることができる
「ターンオーバーの必要性」でも書きましたが…… これがそもそも、ターンオーバーを実施する一番の目的です。
ですから、メリットになるのは当然ですね。
サッカーに限らず、どのスポーツでもそうですが、疲労が蓄積した状態で試合に出場するのは、怪我のリスクが高くなります。
それを防ぐためにも、主力選手を休ませることができるターンオーバーは有効と言えます。
メリット2:疲労によるチームパフォーマンス低下の回避
2つ目のメリットは、チーム全体のパフォーマンスに与える影響です。
何が言いたいのかというと、「疲れのたまった主力選手たちを起用し続けるより、元気な控え選手に入れ替えた方がチームとして高いパフォーマンスを発揮できる」ということです。
主力選手であっても、疲労が蓄積しているときは動きが落ちますし、判断力も鈍りがちです。
それなら、技術で劣っていたとしても、疲労をしていない控え選手たちが出場した方が、高いパフォーマンスを発揮できる場合があります。
もっとも、このメリットを享受できるのは主力選手と控え選手の実力差がそれほど大きくない場合になりますが。
メリット3:若手の強化と控え選手のモチベーション維持
ターンオーバーを実施すると、主力選手が出場しない代わりに、普段なかなか出場機会に恵まれない選手にチャンスが与えられます。
それによって、
- 若手選手に試合経験を積ませることができる
- 控え選手のモチベーションを維持できる
というメリットがあります。
ターンオーバーのデメリットは2つ
ターンオーバーでデメリットとなるのは、次の2つです。
- 戦術の浸透に時間がかかる
- 連係面ではどうしても劣る
デメリット1:戦術の浸透に時間がかかる
これは主に、監督交代などでチームの戦術ががらりと変わったときに発生しがちな問題です。
サッカーに限らず、他のスポーツにも言えることだと思いますが、新しい戦術を根付かせるのに有効な手段の一つが、同じメンバーで試合を繰り返すことです。
しかしながらターンオーバーを実施してしまうと、同じメンバーで試合をする回数は減ってしまいます。そのため、チームに戦術を浸透させるのに時間が掛かってしまうのです。
デメリット2:連係面ではどうしても劣る
これもデメリット1で挙げたのと似た話になりますが、ターンオーバーでは普段一緒に試合に出ていないメンバーが出場することになるので、連係面ではどうしても劣る部分が出てきます。
これについては、戦術が十分浸透しているクラブについても同じです。
「阿吽の呼吸」みたいなものは、いつも一緒に試合に出ているメンバーだからこそ生まれるものですからね。
メンバーが変わることによって、呼吸の合わない場面は出てきてしまいます。
日本のターンオーバー事情
イングランドやスペイン、ドイツといった、ヨーロッパのトップリーグでは当たり前のように採用されているターンオーバー。
しかし日本では、その採用は最近まで限定的でした。
というのも日本では、「ベストメンバー規定」という、ターンオーバーを制限するような規定が猛威を振るっていたからです。
ベストメンバー規定とは
一般的にベストメンバー規定と呼ばれているものは、Jリーグ規約第42条のことです。
第 42 条〔最強のチームによる試合参加〕
Jクラブは、その時点における強のチーム(ベストメンバー)をもって前条の試合に臨まなければならない。
引用元:Jリーグ規約・規定集
これ自体は特に理不尽でもなく、当たり前のことを言っているのですが、かつてはこれに「補足基準」なるものが存在していました。
この補足基準、なかなかに悪名高いものでして、
- ベストメンバーとは、どんな選手のことか
- 違反した場合の罰則規定
などがこの中で決められていたのです。
J1リーグの場合は、次の通り。
第1条
J1リーグ戦およびリーグカップ戦における先発メンバー11 人は、プロA契約選手または外国籍選手を合計6名以上含まなければならない。ただし、アマチュア選手、プロB契 約選手およびプロC契約選手は、当該外国籍選手に含まない。
引用元:「J リーグ規約第 42 条の補足基準」(2018年)
制裁については、次のように規定されていました。
第5条
JクラブがJリーグ規約第 42 条または本基準に違反した場合の制裁は次のとおりとし、これらの制裁を併科することができる。
① 制裁金 2,000 万円以下の制裁金を科す
② 勝点減 リーグ戦における違反行為に対する制裁として、リーグ戦の勝点を 1件につき3点を減ずる。
③ 出場権の剥奪 リーグカップ戦における違反行為に対する制裁として、次年度のリ ーグカップ戦への出場権を剥奪する。
引用元:「J リーグ規約第 42 条の補足基準」(2018年)
実際に、この規定に違反したとして制裁を受けたクラブも複数存在しています。
そのため日本では、Jリーグや、Jリーグカップ(旧ナビスコ杯、現ルヴァン杯)でのターンオーバー採用は限定的なものとなりました。
2019年から、ベストメンバー規定は事実上の撤廃
長々と引用まで用いて説明してきたベストメンバー規定ですが、実は現在、この規定は「事実上」存在していません。
- ベストメンバーを決めるのはチームやスタッフで、リーグではない。
- 世界ではターンオーバーが当たり前なのに、それを制限するようなルールは異質。
などの理由で批判が多く、2019年から撤廃になったからです。
正確には、第42条「最強のチームによる試合参加」の条項は残っているのですが、ベストメンバーや罰則について規定した補足基準の方が撤廃となりました。
このため、今後はJリーグやJリーグカップでもターンオーバーが積極的に採用されることになるものと思われます。
天皇杯では、以前からしばしば見られたターンオーバー
なお、日本三大タイトルの一つ天皇杯では、2019年以前から大幅なターンオーバーが頻繁に見られました。
これは、第42条の補足条項の対象が、天皇杯には適用されなかったためです(対象はJリーグとJリーグカップのみ)。
天皇杯は、J1やJ2といったプロチームだけでなく、JFLや地域リーグといったアマチュアも出場する大会なので、J1のチームからするとターンオーバーが使いやすいのですが……
それで下のカテゴリのチームに負けてしまうケースが頻発していることも、事実だったりします。
ターンオーバーを見分ける方法は?
5人以上入れ替わっていたら、ターンオーバー
ターンオーバーの定義は、「先発メンバーの大幅な入れ替え」です。
ただ、大幅というのが何人なのか、という点には明確な定義がありません。
そこでここからは感覚的な話になってしまうのですが、サッカー観戦歴25年以上の私からすると、「いつものメンバー」から5人以上入れ替わっていたら、ターンオーバーが使われていると考えていいんじゃないかと思います。
サッカーは11人でやるスポーツですから、5人というと先発の約半分に当たります。
それだけメンバーが入れ替わっていると、随分チームの印象が変わりますよ。
リーグ戦を追っていれば、「いつものメンバー」は一目瞭然
「いつものメンバー」を見極める最も簡単な方法は、そのチームの普段から、国内リーグ戦の試合を追い掛けることです。
普段からリーグ戦の試合を見ていれば、自然にいつものメンバーがわかってくるからです。
普段から試合を追っているあなたが、
と感じたら、そのときは大抵ターンオーバーが実施されています。
幸い、今はJリーグであればDAZNがJ1、J2、J3すべてのカテゴリを全試合中継してくれていますから、どのチームであっても、追いかけることは難しくないでしょう。
直近5試合で3試合以上先発が、主力選手の1つの目安
そういう場合、「直近5試合で3試合以上先発」を一つの目安とすると良いでしょう。
- 直近5試合で3試合以上先発 = 主力選手
- 直近5試合で先発が3試合未満 = 控え選手
と考えれば、おおよそ間違ってはいないと思います。
ターンオーバーの定義に当てはめた場合、「直近5試合で3試合以上先発している選手が6人以下という場合には、ターンオーバーが実施されている」と言うことができます。
※この基準は、あくまで目安です。怪我から復帰したばかりだったり、移籍直後などで、主力選手であっても「直近5試合で3試合以上先発」を満たしていないケースも存在します。
過去の先発メンバーは、Jリーグ公式サイトで調べることができます。
まとめ:サッカーのターンオーバーは過密日程対策
サッカーにおけるターンオーバーとは、試合の重要度に応じて、先発メンバーを大幅に入れ替えることです。
そこには、
- 主力選手を休息させることができる
- 疲労によるチームパフォーマンス低下の回避
- 若手の強化と控え選手のモチベーション維持
というメリットがある一方で、
- 戦術の浸透に時間がかかる
- 連係面ではどうしても劣る
というデメリットも存在します。
どちらを重要視するかは、チームの考え方次第ですね。
メリットを重視して積極的にターンオーバーを採用するチームもあれば、メンバーを固定してほとんどターンオーバーをしないチームもあります。
自分の応援しているチームがどちらなのかは、普段から試合を追い掛けていると自然とわかってくると思います。
今回は、以上です。