こんにちは、早起きラガードです。
読書好きです。
そこそこ本は読んできたつもりですが、それでもまだ未読の本はたくさんあります。
今回読んだのは、この一冊。

レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』です。
こんな人におすすめです。
- 気の利いた会話や、個々の場面を楽しめる人
- ハードボイルド小説の乾いた文体が好きな人
- レイモンド・チャンドラーを読んだことがない人
レイモンド・チャンドラーって?

まずは、作者の紹介から。
レイモンド・チャンドラーは、次のような人物です。
- 1888年アメリカ・シカゴ生まれ
- 小説家・脚本家
- 「ハードボイルド探偵小説」の生みの親の一人
- 活動期間は1933年~1959年
- 1959年70歳で死去
「『ハードボイルド探偵小説』の生みの親の一人」というのが、チャンドラーの特に有名なところですね。
チャンドラーが作家デビューをしたのは、45歳のときです。
作家としては少々遅いスタートですが、そもそも書き始めたのも世界恐慌の影響で職を失ったことが理由でした。
最初の短編は「ブラック・マスク」というパルプ・マガジンに掲載されています。
パルプ・マガジンというのは、大衆向けの安価な雑誌のことでして、「ブラック・マスク」は有名誌だったそうです。
「ブラック・マスク」の作家陣にはチャンドラーの他に、ダシール・ハメットという、ハードボイルド界隈ではチャンドラーと並ぶ有名人などもいました。
チャンドラーはこの人たちとともに、「ハードボイルド探偵小説」を生み出したと言われています。
フィリップ・マーロウ
チャンドラーは生涯に7つの長編作品を残しています。
作家として活動を始めるのが遅かったこともありますが、あまり多作とは言えないですね。
そのすべてで主人公を務めているのが、私立探偵フィリップ・マーロウ。
チャンドラーと言えばフィリップ・マーロウ、といってもいいくらいで、ハードボイルド系私立探偵の中でも真先に名前が出てくる存在です。
- 大いなる眠り(1939年)
- さらば愛しき女よ(1940年)
- 高い窓(1942年)
- 湖中の女(1943年)
- かわいい女(1949年)
- 長いお別れ(1953年)
- プレイバック(1958年)
中でも特に評価が高いのが『大いなる眠り』、『さらば愛しき女よ』、『長いお別れ』の三つの作品。
『長いお別れ』は、2007年に村上春樹さんの翻訳版が発表されたときに、話題になりました。
このときのタイトルは『ロング・グッドバイ』。
原題が『The Long Goodbye』なので、より原作に近い形になったことになります。
なお、『The Long Goodbye』だけでなく、実はチャンドラーの長編7作品は、すべて村上春樹さんによる翻訳版があります。
その場合、他にも日本語タイトルが変更になっているものがあります。
- さらば愛しき女よ → さよなら、愛しい人
- 湖中の女 → 水底の女
- かわいい女 → リトル・シスター
- 長いお別れ → ロング・グッドバイ
『大いなる眠り』(原題:The Big Sleep)

内容
私立探偵フィリップ・マーロウは、ある日資産家のスターンウッド将軍の屋敷に呼び出されます。
将軍のところには、娘のカーメンが賭博で作った借金をネタにした脅迫状が届いていました。
その解決を依頼されたマーロウは、早速、脅迫状の差出人であるガイガーという男を調べ始めます。
書店経営者であるガイガーが、裏でいかがわしい商売に手を染めていることを突き止めたマーロウ。
さらにガイガーの家の周辺を探りますが、そのとき家の中で三発の銃声が轟くのを聞くのでした。
作品について
- レイモンド・チャンドラーの記念すべき長編第一作
- 出版された1939年は、第二次世界大戦が勃発した年
- 『キラー・イン・ザ・レイン』という短篇が原型
『キラー・イン・ザ・レイン』は、1935年に「ブラック・マスク」に発表された短篇です。
日本語訳は、早川書房から出ている『チャンドラー短編全集1 キラー・イン・ザ・レイン』に収録されていて、今でも読むことができます。
『大いなる眠り』はこんな人におすすめ
- 気の利いた会話や、一つ一つの場面を楽しめる人
- ハードボイルド小説の乾いた文体が好きな人
- レイモンド・チャンドラーを読んだことがない人
ハードボイルド探偵小説の古典と呼んでもいい作品ですが、決して古びた印象は受けません。
タフでクール、それでいて優しいフィリップ・マーロウの振る舞いと、会話に大きな魅力があります。
一方、謎解きの部分に目の覚めるようなトリックが仕込まれている、という訳ではないので、ミステリー好きの人は物足りなさを感じるかもしれません。
文体は非常に「乾いています」。
それがハードボイルド小説の特徴でもあるのですが、簡潔な描写には物足りなさを感じる人もいるかもしれません。
チャンドラーの処女長編なので、まだ一冊もチャンドラーを読んだことがない、という人にもよいでしょう。
第一作とはいえ、『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』と並ぶ評価の高い作品です。
チャンドラーの魅力を十分味わえるはずです。
まとめ:『大いなる眠り』って?

そもそも『大いなる眠り』って、何のことだろう? という問いは、最後まで作品を読み通すと明らかになります。
ネットで検索しても出てきますが、知らない方が(少しは)楽しめるでしょう。
最後に少しだけ、注意点も上げておきます。
- 物語が少し入り組んでおり、場面の切り替わりも多い
- そのため集中力を欠いた状態で読むと、筋を見失う
- 目の覚めるようなトリックは仕込まれていない
- ミステリー好きは物足りなさを感じる可能性あり
今回は、以上です。