こんにちは、早起きラガードです。
今回は、こんな疑問にお答えします。
- 五輪のサッカー(男子)に年齢制限がある理由
- 最初から年齢制限があったわけではない
- 「23歳以下」という年齢制限に至った経緯
詳しく、紹介していきます。
オリンピックのサッカー(男子)に年齢制限があるのは、ワールドカップと差別化するため
いきなり、結論です。
どうしてオリンピックのサッカー(男子)には、「23歳以下」という年齢制限が設けられているのか。
その答えは、ワールドカップを世界一を決める唯一の大会にしたいという国際サッカー連盟(FIFA)の強い意向が働いているためです。
もし、オリンピックに年齢制限がなく、ワールドカップ同様A代表が出場できる大会にしてしまうと、必然的に、
という疑問が生まれてしまいますよね。
という競技も少なくないですから、何らかの制限を設けないと、相対的にワールドカップの価値が下がってしまいます。
ただ、そうした状況は、ワールドカップを最も権威の高い大会としたいFIFAには到底受け入れられるものではありません。
そこで、オリンピックのサッカー(男子)には、23歳以下という制限が設けられ、あくまで年代別代表の大会ですよ、という形がとられることになりました。
オリンピックのサッカー(男子)は、いかにして23歳以下の大会になったか
初めて年齢制限が設定されたのは、1992年のバルセロナオリンピック
「23歳以下」という年齢制限が、すっかり定着しているオリンピックのサッカー(男子)。
しかし、そうした年齢制限が初めから存在していたわけではありません。
オリンピックで初めてサッカーが競技として行われたのは、1900年パリ大会。
公式種目になったのは、1908年のロンドンオリンピックからになります。
第1回ワールドカップがウルグアイで開催されたのが1930年ですから、オリンピックにおけるサッカーは、ワールドカップより前から実施されていたことになります。
競技として採用されてからかなり長い間、オリンピックのサッカーには現在と違って年齢制限はありませんでした。
サッカー(男子)に年齢制限が設けられたのは、公式種目採用から80年以上が過ぎた、1992年バルセロナオリンピックからです。
なぜ、バルセロナオリンピックから、年齢制限が設けられることになったのか。
そこには、アマチュアの祭典だったオリンピックに押し寄せた、プロ化の波という事情が、大きく関係していました。
オリンピック → アマチュアの大会、ワールドカップ → プロ・アマ含めた大会という区別が、かつてはあった
現在では、当たり前のようにプロの選手も出場しているオリンピック。
しかし、オリンピックは長らく「アマチュアの祭典」と呼ばれ、プロの選手は出場できない大会でした。
オリンピック憲章に、「アマチュア規定」なるものが存在していたくらいです。
一方、ワールドカップは開始当初から、プロ・アマ問わず出場できる大会でした。
そのため、サッカーでは、
- オリンピック → アマチュアの大会
- ワールドカップ → プロ&アマの大会
という区別が可能でした。
しかし、時代が下るにつれて観客からは次第に、
という声が高まります。
その声に押されるように、1974年にオリンピック憲章からアマチュア規定が削除。
プロ選手の、オリンピックへの出場が勧められていきます。
そうした流れの中にあって、サッカー(男子)も1984年ロサンゼルスオリンピックからプロ選手が出場できるようになりました。
プロ解禁後も、A代表をオリンピックに出場させたがらないFIFA
「プロ選手を解禁したからには、オリンピックにもA代表が出場してもらえる!」
そんな思惑があった国際オリンピック委員会(IOC)ですが、目論見は大きく外れました。
FIFAが、A代表の出場に難色を示したのです。
※A代表というのは、年齢制限のない代表チームのことです。代表チームの最上位に位置し、各国がワールドカップに送り込むのもこのA代表になります。
- A代表に出場してもらいたいIOC
- A代表は出場させたくないFIFA
両者の利害衝突の結果、1984年のロサンゼルスオリンピックでは、
「ワールドカップ予選・本大会に出場した、欧州・南米の選手はオリンピックへの出場を認めない」
という条件の下、プロ選手の出場が認められることになりました。
※なお、この条件自体は、実はひとつ前の大会に当たる1980年モスクワオリンピックから採用されていました。
1988年ソウルオリンピックからの「23歳以下」には、IOCが反発
続く1988年のソウルオリンピック、FIFAはこの大会から「23歳以下」という年齢制限を設けるつもりでした。
しかし、今度はIOCが反発。
ここでも再びすったもんだがあった末、条件は前回ロサンゼルス大会を同じ、すなわち、
「ワールドカップ予選・本大会に出場した、欧州・南米の選手はオリンピックへの出場を認めない」
という形に落ち着きました。
オリンピックのサッカー(男子)が、正式に23歳以下の大会となったのは、ソウルの次の大会。
すなわち、1992年のバルセロナオリンピックから、となります。
「オーバーエイジ」の導入は、年齢制限と同時ではない
現在のオリンピックサッカー(男子)で、忘れてはいけないのが「オーバーエイジ」。
これは、ざっくり言うと「3人までなら、23歳以上の選手を出場させてもいいですよ」という制度のことで、オリンピックが近づくと
- 「オーバーエイジ」を使うかどうか
- 使うとしたら、誰を選ぶのか
ということが話題になります。
今ではすっかり当たり前となったこのオーバーエイジ、実は導入は「23歳以下」という年齢制限と同時ではありませんでした。
観客動員が振るわなかった、バルセロナオリンピックのサッカー
1992年のバルセロナ大会では、サッカーは純粋に23歳以下の選手による大会として実施されました。
というのも、バルセロナオリンピックではまだ「オーバーエイジ」は導入されていなかったからです。
ところが、このバルセロナオリンピックでのサッカー、実は観客動員数が非常に振るわない大会でもありました。
1984年ロサンゼルスオリンピックから、2000年シドニーオリンピックまでの1試合平均観客は、次の通り。
年 | 開催地 | 観客動員 (1試合平均) |
1984 | ロサンゼルス | 44,537人 |
1988 | ソウル | 21,579人 |
1992 | バルセロナ | 14,134人 |
1996 | アトランタ | 38,206人 |
2000 | シドニー | 32,108人 |
ひと際低い観客動員数が、目を引きます。
バルセロナという、サッカー人気の高い地域でのこの観客の少なさは、関係者に大きな衝撃を与えました。
このことがきっかけとなって、次の1996年アトランタオリンピックから、「3人に限って、23歳以上の選手の出場を認める」というオーバーエイジが採用されることになりました。
※なお、バルセロナオリンピックにおけるサッカーの観客動員が少なかったのは、必ずしも年齢制限のためばかりではない、とも言われています。
国際サッカー連盟(FIFA)のオリンピックへの非協力姿勢は、現在も継続
「23歳以下」の年齢制限導入の経緯を見てもわかるように、FIFAは男子サッカーについては、基本的にオリンピックに非協力的です。
その姿勢は、オリンピックのサッカー(男子)が現在の姿に落ち着いた1996年以降も続いていて、
- 年齢制限を21歳以下にすることを提案(2009年)
- 代表チームによる選手の拘束を認めない(2016年リオ五輪以降)
など、嫌がらせとしか思えないような話を次々と持ち出してきています。
特に後者については、実際に採用もされており、日本も影響を受けています。
リオオリンピック当時、チームの主力と目されていた久保裕也選手が、所属クラブが拒否したため、オリンピック本大会に出場できませんでした。
代表チームに選手の拘束権がないため、所属クラブが拒否した場合強制的に招集することができなかったのです。
オリンピックのサッカー年齢制限があるのは男子のみ
オリンピックのサッカーにおける年齢制限について、ここまでに主に男子の話題をご紹介してきました。
という話ですが、女子の場合は、男子と違って年齢制限はありません。
ワールドカップ同様、A代表がそのまま出場可能です。
FIFAが年齢制限を求めなかった理由として、
- 女子サッカーの普及を優先させたかった
- 女子W杯に、まだ男子ほどのプレミアがなかった
ことなどが挙げられます。
特に、「女子サッカーの普及」はFIFAも強く望んでいるところであり、そのためオリンピックの高い知名度を利用したい、という考えもあるようです。
「23歳」という年齢は、世界のサッカーでは必ずしも若手ではない
今回は、オリンピックのサッカー(男子)に年齢制限がある理由と、その経緯についてご紹介しました。
オリンピックは、基本的に23歳以下の選手による大会です(オーバーエージはありますが)。
ですが、「23歳」という年齢は、実は世界のサッカーでは「育成途上の若手」の年齢ではありません。
「所属クラブで主力を担って当たり前の年齢」であり、A代表のレギュラーを獲得している選手もいます。
オリンピックに出場する前に、ワールドカップに出場してしまっているような選手もいますしね。
ですから、オリンピックは必ずしも育成途上の若手による大会ではないことを最後に付け加えておきたいと思います。
今回は、以上です。
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