サッカーの勝利って、どうして勝ち点「3」なんだろう? 引き分けは勝ち点1なんだから、勝ち点2でもいいんじゃないのかな?
今回は、こんな疑問にお答えします。
- そもそもどうして、サッカーは順位を勝ち点で決めるのか
- 勝利は勝ち点「2」から「3」に変更された?
- いつから勝利は勝ち点3になったのか
実は、勝ち点制度が導入されてから長らく、サッカーの勝利は勝ち点「2」でした。
それが、ある時期から勝ち点「3」に変更された、という事情があります。
詳しく、見ていきます。
勝ち点とは
本題に入る前に、まずは勝ち点そのものについて復習しておきましょう。
勝ち点とは、
総当たり方式の大会などで、順位を決定する際に用いられるポイント
のことです。
勝利なら〇ポイント、引き分けなら△ポイントという取り決めがあって、試合の結果に応じてポイントが与えられます。
順位を決めるのは、ポイントの合計値。
積み重ねたポイントが多いほど上位となり、シーズンを通して最も多くの勝ち点を獲得したクラブが優勝となります。
サッカーの勝ち点付与方式はシンプル
勝ち点制度の由来はサッカーにあるようですが、現在は他のスポーツでも採用されています。
付与方式もスポーツによって違いはありますが、サッカーは至ってシンプル。
- 勝利 :勝ち点3
- 引分け:勝ち点1
- 敗戦 :勝ち点0
これだけです。
ラグビーやバレーボールのように、試合内容によって敗戦にも勝ち点を与えたり、勝利の場合も追加の勝ち点が発生したり、というようなことは一切ありません。
1-0の勝利も5-0の勝利も、与えられる勝ち点は同じ3です。
敗戦も同様。
0-10の大敗も、0-1の惜敗も負けは負けです。
惜敗だからといって、勝ち点が与えられることはありません。
順位を勝ち点で決めるのは「引き分け」があるから
そもそも、どうしてサッカーでは、勝ち点制度なんて採用してるんだろう? プロ野球みたいに、勝率で順位を決めた方がシンプルでわかりやすいんじゃないの?
サッカーが勝ち点制度を採用しているのは、「引き分け」があるためです。
勝利でも敗戦でもない「引き分け」があると、単純に勝率だけで順位を決めることができなくなってしまうのですね。
いやいや、プロ野球にも引き分けはあるでしょ!
確かに、日本のプロ野球には引き分けがあります。
ただ、実は本来野球は、引き分けのないスポーツなのです。
事実、野球の本場メジャーリーグには引き分けが存在しません。
そのため、順位の決定にもシンプルに勝率が用いられてきました。
しかしサッカーには引き分けが存在するため、勝率で順位を決めるということができませんでした。
そのため、勝ち点制度を導入し、引き分けの扱いを明確にしたのです。
勝利が勝ち点「3」である理由は?
勝利に与えられる勝ち点が「2」ではなく「3」になっているのは、勝利に対してより大きな価値を与えるためです。
ただ、初めから勝利=勝ち点3だったわけではありません。
1889年に勝ち点制度が導入されてから長きに渡って、勝利に与えられる勝ち点は「2」でした。
それが、ある時期から「3」に変更されたのです。
勝利=勝ち点2の何が問題だったのか?
勝利=勝ち点2で一番の問題となったのは、勝利よりも引き分けを狙った方が有利な状況が発生してしまうことでした。
勝利=勝ち点2の場合、次の2つのケースは勝ち点で並びます。
- 1勝1敗1分
- 3分
ここで問題なのは、未勝利の後者と比較して、勝利を1つ挙げているにも関わらず、前者の方が順位が下になってしまう可能性があること。
というのも、前者には敗戦が1つありますので、得失点差がマイナスになるケースもあり得てしまうのですね。
後者は全試合引き分けなので、得失点差は必ず0です。
引き分け狙いの大きな問題
1勝1敗1分より、3分の方が上位になる可能性があるということは、
だったら、初めから無理に勝利を狙わず、守備を固めて3試合とも引き分けを狙った方がいいな……
その方が低いリスクで、1勝1敗1分と同じ勝ち点が獲得できるわけだし
という考え方につながります。
しかもサッカーは元々点が入りにくいスポーツなので、専守防衛に徹すれば、実力差があっても意外と守り切れてしまったりするんですよね。
そうなるとますます、勝利を放棄して引き分けを狙う方が合理的に思えてきてしまいます。
ただ、そうなると大きな問題が1つ生じます。
引き分け狙いで勝つ気がないチームの試合って、見ている方はあまりおもしろくないんですよね。
サッカーでは魅力的な試合を「スペクタクルな試合」などと呼んだりするのですが、片方がスコアレスドロー(0-0での引分け)を狙い始めると、このスペクタクルさがまったくなくなってしまうわけです。
勝利により大きな価値を与える勝ち点「3」
Noスペクタクルな試合ばかり量産されてしまうと、今度は、
サッカーって、全然点が入らなくておもしろくないスポーツだな……
という人が増えてしまいます。
スポーツで一番興奮が高まるのは、何と言っても得点シーンですからね。
それが滅多に出現しないようなスポーツは、見ている側としてもやっぱりおもしろくありません。
ただ、そうした状況はサッカー関係者にとっても、よろしくない。
これはそのまま、サッカー人気の低下に直結してしまいますからね。
国際サッカー連盟(FIFA)も、そのあたりのことはよくわかっていました。
そこで、何とか引き分け狙いの試合を減らしたい、どんなチームも、点を取って勝利を掴むことを目指すようにしたい、と考え、勝利により大きな価値を与えることにしました。
その結果が、勝利に与える勝ち点を「2」から「3」に変更することだったのです。
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勝利が勝ち点「3」になったのはいつから?
多くの大会で勝利が勝ち点「3」になったのは、1990年代半ばです。
ワールドカップでは、1994年のアメリカ大会から勝利に与えられる勝ち点が「2」から「3」に変更されました。
欧州4大リーグのうち、イタリア、ドイツ、スペインも、ほぼ同じ時期に勝利=勝ち点3が採用されています。
[icon class=icon-check]勝ち点3が採用されたシーズン
国 | シーズン |
---|---|
イタリア(セリエA) | 1994-95 |
ドイツ(ブンデスリーガ) | 1995-96 |
スペイン(ラ・リーガ) | 1995-96 |
導入が早かったイングランド
欧州4大リーグの最後の1つ、イングランド(プレミアリーグ)では、他の3リーグより早く1992年から勝利に勝ち点3が与えられていました。
1992年というのは、プレミアリーグが始まった年に当たります。
ということは、プレミアリーグでは最初から勝利に勝ち点3が与えられていたってこと?
プレミアリーグに関していうと、そうです。
ただ、イングランドにおける「勝利=勝ち点3」は1992年が初めてではなく、プレミアリーグ設立以前の1981年から「勝ち点3」の時代は始まっていました。
他国やワールドカップより15年近くも早い導入は、さすがサッカーの母国、といったところかもしれません。
Jリーグには「勝ち点2」の時代がなかった
欧州4大リーグの「勝ち点3」導入時期はわかったよ。で、Jリーグはどうだったの?
Jリーグで「勝ち点3」が導入されたのも、ドイツやスペインと同じ1995年からです。
ただし、Jリーグの場合は勝ち点2から3になったわけではありません。
1995年以前のJリーグでは、勝ち点制は採用されていませんでした。
勝ち点ではなく年間勝利数で順位を決めていたのです。
引き分けがなかったJリーグ
ん? でも、サッカーには引き分けがあるから、勝利数では順位を決められないんじゃななかったっけ?
本来は、そうです。
ただ、当時のJリーグではそれが可能でした。
というのも、産声を上げたばかりのJリーグでは、引き分けがない完全決着方式が採用されていたからです。
その名の通り、何が何でも決着(=勝敗)を付ける方式です。
1993、94年のJリーグでは、トーナメントの大会のように、
- 90分で未決着 :延長戦
- 延長戦でも未決着:PK戦
という方式が採用されていました。
なお、完全決着方式や延長戦を実施するレギュレーションは、勝ち点制度が導入された1995年以降も続きました。
Jリーグが現在と同じ90分間の結果だけで「勝利」「引き分け」「敗戦」を決定するようになるのは、2003年からになります。
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勝ち点が並んだ場合の順位決定方法は?
サッカーの順位決定で最も優先されるのは、勝ち点です。
しかしながら勝ち点は、同数になることもあります。
その場合の順位決定方法は、大きく分けて2通りあります。
- 全試合の得失点差、総得点が優先される場合
- 当該チーム間の勝ち点、得失点が優先される場合
Jリーグやワールドカップなどでは「全試合の得失点差」が採用されているので、こちらの方がなじみが深いところでしょう。
ただ、これがサッカーの世界での常識かというと、そういうわけでもなかったりするのですね。
欧州4大リーグでもどちらを採用するかは国によって違っていたりします。
[icon class=icon-check]全試合の得失点差、総得点を優先しているリーグ
- Jリーグ
- プレミアリーグ(イングランド)
- ブンデスリーガ(ドイツ)
[icon class=icon-check]当該チーム間の勝ち点、得失点を優先しているリーグ
- ラ・リーガ(スペイン)
- セリエA(イタリア)
各国のリーグ戦を見るときは、注意したいところです。
勝利はどうして勝ち点3?:まとめ
本記事では、勝利は次のような内容について紹介しました。
- 順位を勝ち点で決めるのは、「引き分け」があるから
- 勝ち点3への変更は、勝利をより重視するため
- 勝ち点3が主流になったのは、1994年以降
勝利を重視するために変更された勝ち点3ですが、異論がまったくないわけでもありません。
よく言われるのが、1試合の価値の違いです。
- 勝敗が付いた場合:合計で発生する勝ち点は3
- 引き分けの場合 :合計で発生する勝ち点は2
となり、不公平だという話です。
まあ、「勝利=勝ち点3」自体、勝ち点導入以来100年以上続いていた「勝利=勝ち点2」を変更したものですからね。
今後、再び変わることもないとは言い切れません。
今回は、以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。