こんにちは、早起きラガードです。
今回は、こんな疑問についてお答えします。
なお、先に結論を言ってしまうと、次の通り。
- J1優勝経験のあるクラブの降格は、J2全体の観客増加にあまり貢献しない
- 長期の視点で見ると、「J2 G大阪」の効果も疑わしい
詳しく、見ていきます。
J1優勝経験のあるクラブが降格したときの、J2の観客動員数は?
2013年のJ2で観客が増えたのは、「G大阪の選手を観たいがために、G大阪と対戦するクラブのファンやサポーターが、いつもより多くスタジアムに足を運ぶようになったから」と言われています。
G大阪自身は、前年(J1時代)より観客を減らしているんですけどね。
J2降格時点で、J1優勝経験のあったクラブ
対象は、次の5クラブ。
- 東京ヴェルディ1969
- ガンバ大阪
- ジュビロ磐田
- 名古屋グランパス
- 柏レイソル
このうち東京Vだけは、2度のJ2降格を経験しています(2005年と、2008年)。
なお、今回対象としているのは「J2降格時点で、J1優勝経験があったクラブ」なので、J2降格を経験した後にJ1優勝を果たした浦和レッズやサンフレッチェ広島は含まれていません(浦和と広島は、J2降格時点ではJ1優勝未経験でした)。
また、柏は2018年のJ2降格が対象となりますが、本記事を書いている時点ではまだ2019年のJ2はシーズン中で、観客動員数が確定していないため、柏も対象から外します。
というわけで、本記事では次の4クラブを対象に、J2降格時の観客動員数を見ていきます。
- 東京V
- G大阪
- 磐田
- 名古屋
東京ヴェルディ1969の場合
Jリーグ(J1)優勝
- 1993年
- 1994年
J2降格
- 2005年
- 2008年
東京ヴェルディ1969の優勝は、Jリーグ初年度の1993年と、翌年の1994年。当時のクラブ名は「ヴェルディ川崎」でした。
三浦知良選手やラモス瑠偉選手を擁し、Jリーグ草創期を代表する人気クラブでしたが、95年以降はJ1リーグでの優勝がなく、2005年にJ1優勝経験のあるクラブで初めて、J2に降格しています。
初めての降格で、観客動員数は激減。
- 2005年(J1) 14,716人
- 2006年(J2) 5,705人
J2全体の1試合平均観客動員数も、増えるどころか1,000人以上も減ってしまいました。
- 2005年 7,482人
- 2006年 6,406人
2度目の降格である2008年も状況は似ていて、1試合平均観客動員数は2008年(J1)の14,837人から、2009年(J2)の5,521人に減らしています。
J2全体についても、やはり減少。
- 2008年 7,072人
- 2009年 6,326人
東京Vの降格によって、J2の観客が減った、というわけでもないでしょうが……
少なくとも東京Vの降格が、J2の劇的な観客増にはつながっていないことはわかります。
ジュビロ磐田の場合
Jリーグ(J1)優勝
- 1997年
- 1999年
- 2002年
J2降格
- 2013年
降格年度ではガンバ大阪の方が先ですが、後回し。まずはジュビロ磐田からいきます。
磐田は今回取り上げた4クラブの中で、優勝回数が3回と最も多いです。
1990年代後半から2000年代初頭は鹿島と磐田の二強時代と言ってよく、1996年から2002年までの7年間は、この2クラブで優勝を分け合っていました(鹿島4回、磐田3回)。
ただ、2000年代半ば以降は、明暗が分かれました。
鹿島はその後も優勝を重ねますが、磐田はすっかりリーグタイトルと縁がなくなり、2013年には遂に降格。二強時代の面影を、すっかり失くしてしまいました。
- 2013年 6,665人
- 2014年 6,589人
J2リーグ全体の観客動員数は、わずかではあるものの減っています。
東京V同様、「J1優勝経験クラブ」の肩書は、J2の劇的な観客動員数増加にまったく貢献していません。
東京V、磐田ともに、最後のリーグ優勝から10年以上過ぎてからの降格ですからね。
黄金期の選手はほとんど残っていなかったでしょうし、この結果も当然なのかもしれません。
名古屋グランパスの場合
Jリーグ(J1)優勝
- 2010年
J2降格
- 2016年
名古屋の特徴は、最後のJ1優勝からJ2降格までの期間が、今回取り上げた4クラブの中で最も短いこと。
2010年の優勝から、わずから6年でJ2降格の憂き目に遭っています。
ちなみに他のクラブは次の通り。
- 東京V 11年
- 磐田 11年
- G大阪 7年
G大阪とは、1年違いです。
- 2016年 6,946人
- 2017年 6,970人
名古屋がJ2で戦った2017年は、リーグ全体の観客動員数が前年よりわずかに増えています。
ここまで見てきた3クラブ中で、初めての増加ですね。
ただ、その人数は24人と極めて軽微。ほとんど影響がないといっていいレベルです。
他のクラブに比べると、J1優勝の記憶はまだ新しいはずなのですが、J2全体の劇的な観客動員数増加には、やはりまったくつながりませんでした。
ガンバ大阪の降格で、J2の観客は本当に増えたのか
J2降格時のガンバ大阪の状況
最後に、本記事のきっかけになったガンバ大阪のケースです。
基本的なデータは、次の通り。
Jリーグ(J1)優勝
- 2005年
J2降格
- 2012年
状況としては、以下の点で名古屋に近いですね。
- J2降格時には、J1優勝回数は1回
- J1優勝から、10年未満でJ2降格
ただメンバーは、名古屋とは大きく違っていました。
というのも、G大阪には当時日本代表で主力を担っていた遠藤保仁選手、今野泰幸選手が所属していたのです。
G大阪がJ2で戦うことになった2013年はW杯の前年に当たっていたため、代表でも欠かせない存在だった遠藤選手の去就が話題になりました。
とかいう、冗談なのか本気なのかわからないようなことを言っている人たちもいましたが…… (金のある浦和が買い取れ、とかいう意見もネット上ではありました)
両選手とも、結局クラブに留まってJ2でプレーすることを選択しました。
J2の観客動員への影響
遠藤、今野両選手がクラブに留まることが決まると、新たな期待が生まれました。
J2の試合で現役の日本代表選手のプレーが見られることはそうそうないですし、まして遠藤、今野両選手は代表でも主力でしたからね。
そういう期待も、わからなくはないです。
そして結果も、それに応えるものになっていました。
- 2012年 5,805人
- 2013年 6,665人
1試合平均860人の増加。期待通り、観客はかなり増えました。
確かにこの結果を見ると、そう言いたくなりますね。
実際、そういう報道もなされていました。
ただ実際のところ、G大阪のJ2降格による観客動員の影響を測るのに、この比較は十分ではありません。
対象としている期間が、あまりに短すぎるからです。
範囲を少し外に広げてみるだけで、違った状況が見えてきます。
「J2 ガンバ大阪」による効果は限定的
2012年より前と、2013年より後も加えたJ2リーグの1試合平均観客動員数は次の通り。
- 2010年 6,696人
- 2011年 6,423人
- 2012年 5,805人
- 2013年 6,665人※
- 2014年 6,589人
- 2015年 6,824人
※G大阪がJ2で戦った年。
上記の通りで、G大阪降格以前にも、G大阪がJ2で戦った年と同程度の観客動員数は、既にJ2で達成できています。
つまり、J2は元々1試合平均6,500人程度の観客動員力は持っていたのです。それが、元に戻ったというだけの話ですね。
2012年に一時的に観客動員が落ち込んだのは、クラブ数増加(20→22)の影響と思われます。
増えたクラブは観客動員力の劣るJFLからの昇格ですからね。1試合平均の観客動員数が減ってしまうのは仕方ないかと。
「J2 G大阪」の影響が、まったくなかったとまでは言いません。
しかし、効果は限定的でしょう。
その証拠に、G大阪がJ2を去った(J1に昇格した)2014年以降も、J2では6,500人以上の観客動員数を維持できています。
G大阪だけがJ2全体の観客動員数を引き上げていたのなら、G大阪昇格後はもっと落ち込むはずですよね?
まとめ:「J1優勝経験」に集客力はない
東京V、磐田、名古屋のケースからわかることは、「J1優勝経験」が集客にほとんど効果をもたらさないことですね。
「所詮は過去の栄光」ということでしょうか。まあ、直前のシーズンはJ1下位だったわけですからね。
「現役日本代表選手所属」の方が効果は大きくなりそうですが、
- 日本代表に選ばれるような選手は、降格からは縁遠い上位クラブに所属している
- そもそも、近年の代表選手は大半が海外組
という事実を考えると、今後もあまりケースは多くないのかもしれません。
2012年のJ2に「クラブ数増加による観客減」という特殊事情がなければ、2013年のG大阪でもう少しおもしろいデータが取れたと思うのですが。
その点が、少し残念でした。
今回は、以上です。