こんにちは、早起きラガードです。
今回は、こんな疑問にお答えします。
ACL決勝は、一発勝負ではない
ACL決勝はホーム・アンド・アウェー方式
本場かどうかは別として…… ヨーロッパでやっているUEFAチャンピオンズリーグの決勝は、一発勝負です。
会場は、中立地とは限りません。
UEFA(欧州サッカー連盟)が大会前に決めるため、決勝に進出したクラブの、どちらかのホームスタジアムになる可能性はあります。
一方、アジアで行われているACL(AFCチャンピオンズリーグ)では、決勝もホーム・アンド・アウェー方式が採用されています。
「決勝」と銘打っておきながら、優勝決定に2試合を要することに違和感を覚える人もいるかもしれませんね。
どうしてACL決勝は一発勝負ではない?
理由はいくつか考えられますが、大きなところは公平性と興行の側面からと思われます。
公平性
ヨーロッパと比較して、アジアは非常に広いです。あまりに広く、移動がかなりの負担となるため、ACLも準決勝までは、エリアを東西に分けて実施しているほどです。
そしてこの広大さは、決勝を一発勝負で実施しようとした際の、会場の選定に難しさを生じさせます。
決勝の会場が、たとえ決勝進出クラブのホームでなかったとしても、東寄りか、西寄りか、というだけで不公平さが生まれてしまうのですね。
例えば、日本のクラブとサウジアラビアのクラブが決勝で戦うことになったとき。
会場が中国や韓国であれば日本の方が有利でしょうし、カタールやUAEであれば、サウジアラビアのクラブに有利となってしまうでしょう。
※ここではあくまで移動距離だけに焦点を当てています。政治面も考慮すると、「近いからといって必ずしも有利ではない」という指摘もあるかもしれませんが、それはまた別のお話。
移動の負担がそれほど大きくないヨーロッパであれば、この点には目を瞑れるのかもしれませんが、アジアではそうはいきません。
これが、一発勝負における公平さの問題になります。
興行面
これはまあ、言わずもがなかもしれませんが……
中立地での一発勝負よりも、互いのホームで一試合ずつ試合をする方が興行的な成功は見込まれます。
UEFAチャンピオンズリーグの場合、
- 決勝は、世界中のサッカーファン・関係者が注目する一戦になる
- ほとんどの場合、対戦カードは世界的に知名度のあるビッグクラブ同士の対戦になる
という理由から興行面での心配はないですが、アジア王者を決めるACLでは、残念ながらそうはいきません。
興行面を考えると、どうしてもホーム・アンド・アウェー方式が採用されることになってしまいます。
ACL決勝が一発勝負で行われたこともあった
ここまで、ACL決勝がホーム・アンド・アウェー方式で実施される合理性について紹介してきましたが…… 実は過去に、ACL決勝が一発勝負で実施されていたこともありました。
2009年から2012年までの4年間が、その時期に当たります。
ただ、会場の決定方法は、前半の2年間と後半の2年間で異なりました。
2009年、2010年の決勝会場
一発勝負最初の2年間は、決勝が中立地での開催となりました。
場所は2年とも日本の国立競技場(旧国立競技場)で、これは大会が始まる前に決まっていました。
決勝のカードは、次の通り。
年度 | 対戦カード | 観客 |
2009 | 浦項(韓国) 1-2 アル・イテハド(サウジアラビア) | 25,473人 |
2010 | 城南(韓国) 3-1 ゾブ・アハン(イラン) | 27,308人 |
先ほどの公平性の観点でいうと、韓国のクラブの方が有利ですね。
中立地とはいえ、韓国から日本に来るのと、サウジアラビアやイランから日本まで来るのとではかなりの違いがあります。
なお、せっかくの自国開催だったのですが、Jリーグのクラブは2年とも決勝まで辿り着くことができませんでした。
2011年、2012年の決勝会場
2011年、2012年の会場は、決勝に勝ち進んだ2クラブのうち、どちらかのクラブのホームスタジアムでした。
どちらのクラブのホームになるかは、事前の抽選で決まります。
公平性の観点でいうと、これは0点と言ってもいいんじゃないかと思いますね。ホームの方が有利なのは、明らかですから。
会場の決定方式が抽選というところで、わずかに公平性を担保している、ということなのかもしれませんが。
ただ、興行面では過去2年よりは成功しました。
年度 | 対戦カード | 観客 |
2011 | 全北(韓国) 2-2(PK2-4) アルサッド(カタール) | 41,805人 |
2012 | 蔚山(韓国) 3-1 アル・アハリ(サウジアラビア) | 42,153人 |
※左がホームのクラブ。どちらも韓国で行われました。
2009年、2010年も韓国のクラブが決勝に進出しているのですが、観客は2011年、2012年の方が、およそ15,000人多いです。
公平性より興行面を優先したのが、この2年間だった、ということでしょうか。
ただ、さすがにAFCもこれでは不公平さが大きいと考えたのか、2013年からは元のホーム・アンド・アウェー方式に戻して、今に至っています。
そもそも決勝の一発勝負は一般的?
UEFAチャンピオンズリーグの知名度があまりに高く、かつその決勝が一発勝負であるため、
と考えがちですが…… 実は世界を見渡すと、決勝の一発勝負は少数派です。
各大陸連盟の決勝方式は、次の通り。
大陸 | 大会 | 決勝方式 |
ヨーロッパ | UEFAチャンピオンズリーグ | 一発勝負 |
南米 | コパ・リベルタドーレス | H&A |
アジア | AFCチャンピオンズリーグ | H&A |
アフリカ | CAFチャンピオンズリーグ | H&A |
北中米カリブ海 | CONCACAFチャンピオンズリーグ | H&A |
オセアニア | OFCチャンピオンズリーグ | 一発勝負 |
※H&Aは、ホーム・アンド・アウェー方式のことです。
UEFAチャンピオンズリーグ以外で、決勝を一発勝負で実施しているのはオセアニアのOFCチャンピオンズリーグだけ。
そのOFCチャンピオンズリーグも、常に一発勝負ではなくホーム・アンド・アウェー方式で実施している年もあります。
というより、ホーム・アンド・アウェー方式で実施している年の方が多いです。2019年大会が一発勝負だったため、表ではその内容を反映しました。
つまり、ACLが採用しているホーム・アンド・アウェー方式の方が実は一般的で、一発勝負のUEFAチャンピオンズリーグの方が特別なのです。
まとめ:ACL決勝は一発勝負でない方がよい
まとめます。
- ACL決勝が一発勝負でない主な理由は、公平性と興行面
- かつてACL決勝が一発勝負で行われたこともある
- 世界的には、決勝が一発勝負でない方が一般的
地理的なことを考えると、ACL決勝はホーム・アンド・アウェー方式で実施する方がいいような気がします。
UEFAチャンピオンズリーグの一発勝負に憧れはあるものの、せっかくの決勝戦ですから、選手にはなるべく公平な条件で戦ってもらいたいですからね。
観ている方としても、ホームで決勝戦が見られる方がありがたいですし。
今回は、以上です。