こんにちは、早起きラガードです。
今回は、そんな疑問についてお答えします。
※Jリーグと書いていますが、ここではそのトップカテゴリであるJ1リーグが比較対象となります。
なお、先に結論を言ってしまうと
- ロマンを求めるならACL
- 実利を取るならJリーグ
が答えとなります。
タイトルの権威は、JリーグよりACL
ACLとは
簡単に言うと、「アジア各国の強豪クラブを集めて、ナンバー1を決めよう」という大会です。
- 正式名称AFCチャンピオンズリーグ
- アジアの実力ナンバー1クラブを決める大会
- 出場できるのはAFC所属の国・地域のリーグ戦、カップ戦王者と、上位クラブのみ
- モデルはヨーロッパで行われているUEFAチャンピオンズリーグ
※AFCはアジアサッカー連盟、UEFAは欧州サッカー連盟のことです。
ACLは出場が簡単ではない
ACLは、まず出場権を得るのが簡単ではありません。
数年に一度条件の見直しが行われますが、日本の場合、2019年時点では次のような条件を満たす必要があります。
- 本大会出場(2枠) :J1リーグ優勝、もしくは天皇杯優勝
- プレーオフ出場(2枠):J1の2位、もしくは3位
※プレーオフというのは予選のようなものです。これに勝たないと、本大会には出場できません。
この厳しい条件のために、J1常連でありながらACLに未だ出場経験のないクラブも少なくありません。
JリーグでACL優勝経験があるのは、わずかに3クラブ
ACLはアジア各国の強豪クラブが集う大会ですから、大会そのもののレベルも当然高いです。
Jリーグで優勝経験があるのは、次の3クラブのみ。
- 浦和(2007年、2017年)
- G大阪(2008年)
- 鹿島(2018年)
複数回の優勝となると、達成しているのは浦和だけです。
出場が難しく、タイトル獲得となるとさらに困難な大会。
アジア各国の王者が集う大会ですから、当たり前と言えば当たり前かもしれませんが……
国内のクラブだけで戦うJ1リーグと比較すると、当然、権威も高くなります。
実利を取るなら、ACLよりJリーグ
優勝賞金だけならACLの方が多い
ここはひょっとすると、勘違いしている方もいるかもしれません。
優勝賞金だけなら、J1リーグよりACLの方が多いです。
- J1リーグ 3億円
- ACL 400万ドル(約4億4000万円)
ACLの方が、1億円以上多いですね。
かつてはJ1リーグの方がACLより賞金が上でした。
それが現在逆転しているのは、2016年以降、二度に渡って賞金の増額が行われたからです。
- 2016年 150万ドル → 300万ドルに倍増
- 2018年 300万ドル → 400万ドルに増額
なお、2017年から「AFCが優勝賞金から5%をピンハネする」というよくわからない規定が設けられています。
そのため、実際に優勝クラブが貰える金額は380万ドル(=約4億1800万円)となりますが、それでもACLの方が、J1リーグよりも高額です。
ACLの賞金以外の収益
そう考えたくなるところですが、ちょっと違います。
何故なら、賞金とは別に与えられるお金があるからです。
ACLの場合、次の名目で資金が支給されます。
- Travel Contribution
- 勝利給
- 各ステージの参加賞
①のTravel Contributionは、アウェーチームに与えられる旅費のようなもの。
②の勝利給は、グループステージ以上の勝利、引き分けのクラブに支払われます。
グループステージからACLに参加し、全勝で優勝した場合の収益は次の通り
- Travel Contribution 48万ドル
- 勝利給 60万ドル
- 各ステージの参加賞 50万ドル
これに、ピンハネ後のACLの賞金380万ドルを加えると、合計は538万ドルになります。
日本円に直すと、6億円弱。
つまりこの金額が、ACL優勝クラブの得られる収益となります。
※なお、これらの金額は2019年のもので、今後変更になる可能性があります。
Jリーグの賞金以外の収益
では、Jリーグの場合、優勝賞金以外の収益はどうなっているのでしょうか?
J1リーグの場合、優勝クラブには賞金のほかに以下のお金が与えられます。
- 均等配分金 3.5億円
- 理念強化配分金 15.5億円(3年間合計)
※理念強化配分金の額は2017年から2019年までのもので、2020年以降は変更になる可能性があります。
これに賞金3億円を加えると、J1リーグ優勝クラブの収益は合計22億円。
優勝しなくても与えられる均等配分金を除いても、18.5億円の収入が得られます。
ACLが6億弱ですから、その差は3倍以上です。
かなり大きいですね。
なお、理念強化配分金は4位のクラブまで与えられて、2位のクラブでも3年合計7億円が支給されます。
J1 2位の賞金は1.2億円なので、合計8.2億円。
均等配分金3.5億円を加えると、11.7億円になります。
優勝が叶わず、2位に終わったとしても、J1リーグではACL優勝の2倍近いお金を得ることができるのです。
こんな大盤振る舞いができるのも、DAZNと契約した10年2100億円という契約があるからなのですが……
いずれにしても、収益面ではJリーグがACLを圧倒しているのがわかります。
Jリーグにはない、ACLの特典と負担
クラブW杯への出場
ACL優勝クラブに与えられる特典として最も魅力的なのは、クラブW杯への出場権です。
この大会は、勝ち進むことで、UEFAチャンピオンズリーグの王者と対戦できる可能性が出てきます
欧州王者と公式戦で対戦できるほとんど唯一の機会なので、これをモチベーションとするクラブ、選手は少なくありません。
ただ、日本で開催される場合は開催国枠としてJ1リーグ王者にも出場権が与えられるので、その分希少性は薄まります。
さらにクラブW杯、2021年以降大会方式の大幅な変更が決定されているため、今後もACL優勝特典になり得るかどうかは、微妙なところではあります。
長距離移動
ACL出場による負担の中で大きいのが、長距離移動です。
現在のACLは、準決勝までは東地区と西地区に分かれて試合が行われます。
そのため、グループリーグの段階からいきなり中東遠征、などという事態はさすがに起こりません。
それでも、東南アジアやオーストラリアは東地区に含まれるので、そういった国々のクラブとのアウェーゲームは当たり前に発生します。
国内だけで試合ができるJリーグよりは、長距離の移動を強いられることになります。
試合数
ACLは勝ち抜き方式なので、試合数による負担はそのクラブがどこまで勝ち進んだか、によって異なります。
優勝するには14試合を戦う必要がありますが、当然ながら出場全クラブが14試合を戦うわけではありません。
また、必ず試合数が増えるわけでもありません。
ACLに出場しているのに、ACLに出場していないクラブより試合数が少なくなるケースが存在します。
ACL出場クラブは、Jリーグカップ(ルヴァンカップ)のグループステージ(GS)6試合とプレーオフステージ(PS)2試合が免除されるからです。
「グループステージ(GS)からACLに出場し、グループステージで敗退した場合」などが、それに当たります。
ACLに出場せずに、Jリーグカップの決勝トーナメントに進出したクラブと比較すると……
ACLに出場 | ACLに出場していない | |
ACL(GL) | 6試合 | – |
Jリーグカップ(GS) | – | 6試合 |
Jリーグカップ(PS) | – | 2試合 |
合計 | 6試合 | 8試合 |
上記の通り。
ACLに出場したクラブの方が、2試合少なくなるのです。
「ACLに出場すると、試合数が増える」というイメージがありますが…… 実際にはそうした単純な図式は、現在は成立していません。
まとめ:ロマンを求めるならACL、実利を取るならJリーグ
- ACLの権威はJリーグより高い
- 優勝賞金だけならACLの方が高いが、賞金以外を合わせるとJリーグがACLをはるかに凌駕(3倍以上!)
- クラブW杯への出場が魅力だが、長距離移動が負担となる【ACL】
ACLとJ1リーグの比較は、権威とクラブW杯への出場を求めるならACL、純粋に収益だけを追い求めるならJリーグ、ということになります。
言い換えるなら、
- ロマンを求めるならACL
- 実利を求めるならJリーグ
ということ。
ただ、実際にはどちらか一つで構わない、ということはなく、出場するからには貪欲にどちらのタイトルも狙ってほしい、というのがサポーターの願いでもあります。
現実は過酷で、ACLとJリーグ、両方を獲得としたクラブは今のところ存在しないわけですが……
それに最も近づいたのは、2007年の浦和。
ACL優勝、J1リーグは最終節に逆転されるまで首位に立っていました。
今回は、以上です。